二口 晴一の部屋


オールドバソン/Treibert bassoon:1900年頃
オールドバソン/Treibert bassoon:1900年頃
バロックファゴット ソロ
バロックファゴット ソロ


プロフィール

二口 晴一

フタクチ セイイチ

 

1958年生まれ、16歳より大阪市ユースオーケストラにてファゴットを始める。 

甲南大学法学部在学中よりテレマンアンサンブルで演奏。バロックファゴット楽器奏者として内外で数多くのコンサート、レコーディングプロジェクトに参加する。またこの間、大阪市ユースオーケストラ指導員として青少年の指導にも尽力した。

 西村孝志、宇治原明、森泰夫の各氏にファゴットを師事。

 堂阪清高氏にバロックファゴットを師事。

 延原武春氏に室内楽を師事。 

 

ひとこと

 

自分にとって、初のレコーディング仕事がJ.S.バッハのカンターター全集でA=392のバロックバスーンを使うというものでした。

 

日本にはそんな楽器はないので、フランスからリハーサル開始の少し前に届いた楽器を自分が調整し、吹きこなしてレコーディングセッションをこなさなければなりませんでした。

その後、10年間でバロックコントラを始め、色々な楽器を吹きこなしてきましたが、諸事情により突然活動を休止しました。

 

もう、自分が音楽をすることはない。と思っていましたが、たった1台、フランス人から譲り受けたTreibert製のオールドバソンを取り出し修復を始めました。なにげなくです。

 

同時にリードの設計、製作もはじめました。しばらくすると怪しげな音をが鳴り始め、そにうちに「もっと旨く吹きたい、もっといい音がだせるはず」とバソンにハマっていきました。Triebertバソンはそんな気持ちに答えるかのように、徐々に鳴りだしました。Old Bason Duoでは古いBuffetを使いますが、このTriebertは自分の原点ともいえる楽器です。

 

また、オールド・バソンを通じて、かつてのライバル(同学年)の中山氏にも巡り会うことができましたし、今では、新しいヘッケルなどのドイツ式を吹こうという気にはなれません。新品の楽器は扱い易そうですが、私には新しい機能的な楽器よりもこれらの古い楽器の音がしっくり来ます。

 

TriebertにしろBuffetにしろ、はるか昔、パリで誕生し、それから長い年月を重ねた木のボディが奏でる音はとてもいい音だと思います。

 


<演奏歴>

テレマン管とモーツァルトFg協奏曲(月例コンサート)、協奏交響曲(定期演奏会)。ヴィヴァルディFg協奏曲(e-moll.a-moll,B-dur)などを度々演奏。

 

1986年にリサイタル開催(アクア文化ホール)リサイタルは毎日新聞、音楽の友誌などで好評を博す。

 

1987年ソウル国際音楽祭にテレマン室内管弦楽団のソリストとして参加、KBSホール大ホールでヴィヴァルディFg協奏曲を演奏。

 

「1990年から2000年までの10年間バロックファゴットで蔵の町音楽祭、北トピア音楽祭、東京バッハモーツァルトオーケストラ、BCJ カンタータ全曲レコーディング(BIS/キングレコード)、津田ホール/琵琶湖ホールの室内楽シリーズなどで演奏。

バロック、クラシック楽器演奏、18世紀音楽のスペシャリストとして日本の第一線で活躍し、この間演奏した楽器は11本を数えた。

 

演奏ピッチはA=392,415,430,440をそれぞれの楽器で吹き分け、楽器調整のノウハウを会得。とりわけバッハコレギウムジャパンのヨハネ受難曲ツアーでは日本人として初めてのコントラファゴットを各地で演奏し、CD録音も残した。

 

バッハ教会カンタータ全集 

Vol.1CD751/Vol.5BISCD841/Vol.8BISCD901/ Vol. 10 BIS951/ Vol. 12 BIS1031/Vol. 13 BIS1041/ Vol. 14 BIS1031/ Vol. 16 BISCD1131、 Vol.19 KKCC-2344、

マニフィカートCD1011  ヨハネ受難曲BISCD921/2

マタイ受難曲CD1000/2 など

 


いい音色とは

アンソニー・ベインズの名著「木管楽器とその歴史」には昔のバスーン奏者の音色についての記述があるのでご紹介します。

 

「山羊のようだ」

「ベーコンを揚げているようだ」「七面鳥が庭を這うような音」

 

標準以下の奏者はこのように言われていたという。一方で良い音についての記述も。

 

「まろやかで一杯に鳴る音」

ホームズの音色

 

「まるで海神(ポセイドン)が語っているようだ」

モーツアルトの協奏作品

 

中でも一番好きなのはこれ。

 

「死者の骨のうちにも魂を呼び起こす霊感に満ちた音」

パリの銘器サヴァリーを駆使しロンドンに君臨した名手、バウマンの演奏について。

 

そのバウマンですらリードの調子が悪い時は、山羊や七面鳥になったらしく、当時からフランス式奏法の気難しさは際立っていたようだ。今も昔も楽器から良い音を引き出すのが音楽家の務めであり、めざす音色は 「人が本能的に心地よいと感じる音」でなければならない。と思うにいたりました。

 

とはいえ、オールドバソンは気難しい楽器。せいぜい山羊や七面鳥にならないように頑張ります。


中山君のこと

学生時代にあるファゴットカルテットの演奏会を聞きました。

 

そこでもの凄い衝撃を受けたのが、同年齢の中山康君の音でした。

 

朗々と鳴り響く艶のある音と気っ風のいい演奏ぶり。

 

当時は京都芸大の同学年の人達はすぺて自分の2nd として一緒に仕事をしていましたが、彼だけはどうしても呼べなかった。

 

自分の存在が霞んでしまう恐れがあったから。

 

今から思うと、器量の小さな話しですが、当時はプロとしての死活問題。

 

でも今は、バソンに転向したことで、思う存分彼と張り合う演奏が出来るようになりました。

 

自分はかつてバロックファゴットの専門家、バソンでは中山君が先輩になるので、貴重な情報交換ができます。

 

そのうえでいざコンサートになったら真剣勝負。さかんに火花を散らし音色を競い合い、音楽を競い合う。

 

また、バソンの音色も寄り添ったり、離れていったりもする、とてもおもしろい演奏ができます。


オールドバソンを楽しむために

自分の経験に基づいて、オールドバソンを楽しむ方々のために、さまざまなお手伝いをさせていただきます。

 

楽器のオーバーホールや修理は修理の専門家にお任せください、自分がやっているのはヴォイシング(フィッティング)です。

言い換えれば、楽器の現状を診てベストの状態を作り出すことです。