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ファゴットにはドイツ(ヘッケル)式とフランス式があります。
ボアの形状やトーンホールの大きさなど、基本設計において古典的な楽器の流れを受け継いでいるのがフランス式バソンで、ヘッケル式は新しい新発明の楽器なのです。
主な作曲家の生誕年と古典的なファゴットからヘッケル式への移行時期を表にしてみました。
緑色が古典的な楽器、バソンのエリアと時代
赤く彩色した時代がヘッケルが使われた(であろう)時代です。
現在のオーケストラで使用されている多くの木管楽器の形式は19世紀に発明されました。
ベーム式フルートは1832年
おなじシステムのクラッリネットが1843年
エーラー式クラリネットは意外と新しく1903年
コンセルバトワール式オーボエも19世紀なかば、
ドイツ式クラリネットやヘッケルファゴット(1870年完成)は「新しい楽器」でした。
ヘッケルファゴットを世界で初めて採用したオーケストラは実はウイーンフィルなんです。音楽の都の古い伝統のオケ。というイメージが強いですが、その昔は新しい楽器を真っ先に採用するようなオケだったのです。
マーラーの交響曲第一番(初演がウィーンフィルではない)などはヘッケル式ではなかったのではないか?と想像します。
一方で、リヒャルトシュトラウスの有名なクラとファゴットのドッペルコンチェルトはあきらかにヘッケル式ファゴットのために書かれたコンチェルトです。この曲を献呈された当時のウイーンフィルのブルクハウザー氏の楽器はヘッケルでした。
年表を見ると一目瞭然ですが、ドイツ語圏の作曲家でもそれ以前の作品はすべて「ヘッケル式以外」の楽器を想定して書かれたことが事実としておわかりいただければ、と思います。
その他の地域にヘッケル式が波及するのは、トスカニーニとニューヨークフィルの欧州演奏旅行後、ですからオケの主要レパートリーのほとんどがヘッケルを想定して書かれていないのです。
念のために申し上げますが、自分は決してバソンだけを賛美するものではありません。かつては7900番代のヘッケルを愛用していたので、ヘッケルの良さは充分知っており、彼ら一族が世界のオーケストラに果たした偉大な功績も讃えています。
バロック時代、古典時代のファゴットのサウンド、運指は国によって様々です。きっとその国の人たちが「いい音」と思う音が奏でられていたのでしょう。ドイツでも一部の奏者は「原ヘッケル的なサウンドを持っていた」との記述もあります。ですから一概にバソンの音が正統だとは言いうのも間違っていると思います。音は残っていませんから。
しかし運指や構造に関して、バソンは極めて古いファゴットに近いのは事実です。これは実際に古い様式の楽器を吹いてみればすぐにわかります。